「砦に依る」 ~八ッ場ダム建設問題で思いだした本~

(絶版だそうです)
新政権が誕生して、いろいろなことが動き出し、民主党などの本気度が感じられます。
しかし難航しているものが多く、八ッ場ダム建設問題もその一つです。
私はことの顛末をよく知らないのですが、この問題のニュースを見て思いだしたのが、写真の本
「砦に拠る」
です。
これは大分と熊本にまたがる下筌ダム(しもうけダム)の建設について、反対する住民と、工事を強行する国の戦いを、住民のリーダー、室原知幸氏の人生を透して書かれたノンフィクションです。
出版元の筑摩書房による紹介は、以下の通りです。
「己が意志力と能力のあらん限りを燃焼し尽くしてダム反対の鬼と化し、ただ一人で国家と拮抗し、ついに屈することのなかった蜂ノ巣城城主室原知幸。
「法には法、暴には暴」のスローガンの下、奇抜な山砦戦術、芝居っ気たっぷりな作戦、そして六法全書を武器として果敢に闘った室原の凄絶な半生を、豊富な資料と丹念な聞き書きをもとに、躍動する文体で描ききった感動の記録文学。」
1958年から1971年にわたる室原氏の戦いは、「蜂ノ巣城紛争」として、当時日本中の注目を浴びたそうです。
私がこの本を読んだのは、1990年頃かと思います。
私はどちらかと言うと、こう言う住民運動には理解を示さない方なのですが、どう言う訳かこの本には食いつきました。
とっても感動しました。
室原氏は、山林の地主の家に生まれたボンボン(失礼)で、東京の大学を卒業してからはずっと家に引きこもっていたようです。
それが、ダムができることに不安を持った住民たちにかつがれてダム建設反対派のリーダーとなり、国と闘うことになるわけです。
室原氏はもう59歳でした。
その時点で、室原氏は住民たちがいすれ国に懐柔されて、反対運動から抜けていくことを予見していた、にも関わらず、です。
私が感嘆するのは、それまで凡庸な生活しか送っていなかった室原氏が、高齢になってから六法全書などを読み始めて、国と渡り合っていく、彼のエネルギーです。
まるで60年間貯めておいたエネルギーを発散するかのように感じられました。
そして彼の死によって、闘争は終わってしまいます。
涙なくしては読めない本です。
なお、著者の松下竜一氏ですが、私はこう見えてもあまり本を読みませんので、この本以外の著書や人となりは知りません。
Wikipediaによると、俳優の緒方拳と親交があり、晩年、緒形拳に、「私もそろそろ室原知幸さんを演じられる年齢になったのでは」、という便りをもらったことがあるそうです。
緒方拳も、「砦に拠る」の映画化を構想していたと言うことだそうです。
この本はどうも絶版のようで、Amazonで調べたら、中古本にプレミアがついていました。
我が家のどこかにあるはずですが、絶対に売りはしません。
図書館などでは蔵書されていると思いますので、データを書いておきます。
「砦に拠る」
松下竜一著
文庫: 467ページ
出版社: 筑摩書房 (1989/11)
ISBN-10: 4480023526
ISBN-13: 978-4480023520
発売日: 1989/11
ものすごくお勧めの本なんですが、各章の始まりが、室原氏の夫人の回想から始まっていて、それが方言のまま書かれているので、それを理解するのはけっこう大変だと思います。
P.S.
書いている途中で、この本に食いついた理由を思い出しました。
学生時代、水道コンサルティングの会社でバイトをしていた時、蜂ノ巣城紛争のことを、社員の方から聞いていて、その言葉の持つ魅力から、ずっと気になっていたんでした。
ちなみに、その会社でバイトをしたときに、初めてパソコンと言うものに触れ、結局今IT産業と言われている世界に飛び込んだのでした。
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